白焼きからはじまり、鰻重まで鰻尽くしを味わえる職人の店
店主の探究心から、日本酒やウィスキーも特注品が
縦に割いた身を串に巻いた「くりから」
串の種類は多く、5本や7本のセットでも注文できる
基本、蒲焼きは重箱で提供しており、お吸い物と漬物が付く
重箱の隅に残るご飯を最後まですくえる専用のレンゲを用意してある
タレはご飯に行き渡るように回しかけている
やや固めに炊いたご飯と相性抜群のタレ
左が麦焼酎、右が芋焼酎で名前は「しらゆき」、中央がウィスキー「見田」
鹿児島の酒造メーカーに依頼して製造しているオリジナルブランド

東京 八丁堀『しらゆき』

店名とも関わる、白焼きが絶対的にお勧め料理

東京で築地と日本橋茅場町の間に八丁堀という町がある。JR京葉線なら東京駅からひと駅で、銀座や八重洲からも徒歩圏内という位置にあり、オフィス街でもありながら、住宅用のマンションも立ち並ぶ、東京中央区とは思えない穏やかな場所である。
この八丁堀に2010年、鰻店『しらゆき』をオープンさせたのは店主で料理長でもある見田一郎さん。鰻の店名で“しらゆき(白雪)”という名前は、こちらの思い込みもあるだろうが、結びつかないので店名の由来を尋ねるた。見田さんが鰻店で修行をしていた時から“鰻の白焼き”が好きで、調味料の味に誤魔化されずに鰻本来の味を計り知るのは“白焼き”であると考え、白焼きの一字違いで「しらゆき」としたそうだ。
その証拠に、この店のお薦め料理として店主が一番に挙げたのはその「白焼き」である。白焼きにするには鰻の肉質や脂ののり具合を見抜けなければいけないのは無論、塩だけの味で食べて貰うには、例え備長炭を使っていても、焼き加減も経験を積まないと最高の仕上がりにはならないという。焼き場で店主が鰻を焼いているところに立ち会わせて貰ったが、取材をしていた時の軽妙な語りや穏やかな雰囲気とは一変し、鰻の焼き加減を見つめる眼光は鋭く、一瞬の隙も許さない緊張感を漂わせている。
自慢の一品である白焼きは、ふんわりと柔らかく焼き上がりながらも、新鮮な魚を焼いた時に漂う、香ばしい白身魚の匂いを感じる。そう、京都で高級魚として知られるグジ(正式名称:アカアマダイ)を塩焼きにしたのと同じような、程良く脂ののった白身魚を食べている感覚である。この店に来たならば、まずは白焼きを賞味するべき逸品であると言えるだろう。

店主お勧めの白焼きは、そのままでも美味しいが、ワサビも乙に頂ける

店内で仕込んだ様々な鰻の串物

白焼きが美味しいのだから、タレを付けた蒲焼きとして頂いても、美味なるのは当然と言えば当然。白焼きと同じように、焦げ目が付くような焼き方にはせず、全体が満遍なく時間をかけて熱を通している。見た目はには焼けているのかと思うくらい焦げ目はないが、食べるとふわふわとした身は、しっかりと熱が通っていることで、ごはんの中にゆっくりと溶けていく。
店主の妥協を許さない姿勢は、細部に渡って感じられ、毎日活饅を仕入れて、毎日自分でさばき、中落ちやレバーなども串にして、現在では手間が掛かりすぎて提供する店が減っている「くりから」「ひれ」「かぶと」も『しらゆき』ではメニューとして出している。これらの串物は串に刺す作業も大変で、焼く技術も難しく手間も掛かるのだが、美味しい鰻を余すところなく食べて貰いたいという店主の想いから今でも作り続けている。

日本酒もウィスキーもオリジナルブランドを用意

並みで無くても上の鰻店でも、この店の店主に勝る本格志向、鰻志向の人はそうそういないだろうと思う。百年以上続く老舗店でも、大規模店でもチェーン店でもないのに、『しらゆき』ではお酒に関して、自店の名前を入れたオリジナルの日本酒に、麦と芋の焼酎を有し、「見田」という店主の名前を付けるウイスキーも酒造メーカーに委託して製造している。美味しい鰻には、美味しいお酒があれば良いのは誰もが頭では理解していても、実際に日本酒、焼酎、ウイスキーまでも自店用に製造するというのは、個人営業レベルの飲食店では聞いたことがない。

職人気質を受け継いでいく

とことん追求する昭和の職人気質とも言える店主の姿勢に惚れて、銀座や丸の内から歩いて訪れる常連客がいるのも、店主の話しを聞いていくと、自然に納得出来てくる。
カウンターとテーブル席を合わせても12席と狭いながらも、常連客の支持を得たことで、30m離れた場所に2号店を5年前に開店させた。2号店は、40席と席数も多く、すき焼きやもつ鍋も食べられる鰻居酒屋として、より幅広い層にうな串と締めの御飯物としての鰻重を食べて貰おうという趣向である。
 現在、店主の見田さんは本店と2号店を行き来しているが、本店側の調理場は若い料理人を雇い、活饅からの仕込み技術を隠さず教え込んでいるという。新しく立ち上げた鰻店だからといって、奇抜なことをする訳では無く、修行した店で教わった伝統的な鰻のさばき方で、内臓も捨てること無く串で焼き、一本一本丁寧に見て、最も美味しくなるように焼いていく。出来た料理は、温かい状態でお客さんのテーブルまで素早く運ぶという、江戸時代から培われてきたであろう東京の伝統的鰻料理が、八丁堀という土地柄もあって、リーズナブルな価格で味わえるのだから、銀座からでも歩いて訪れるべき店である。
 
[訪問:2020年5月、文/中西 純一、写真/佐藤 兼永]  

炭火を使って、表面に焼き目が付かないように丁寧に焼いていく

店舗情報

  • 基本情報
  • 営業時間
  • 地図
  • その他

住所:東京都中央区新富1−15−3
電話:(03)6280-4524
席数:12席(カウンター席、テーブル席)
メニュー:英語メニューあり

月曜〜日曜/17:30〜23:00(ラストオーダー 22:30)
<定休日>
土日祝日で不定休(要確認)

開店:2000年
運営母体: 株式会社しらゆき
自社HP: https://shirayuki.gorp.jp/
デリバリー:Uber Eats 等
その他:40席の広さを持つ2号店が30m京橋側にある
2号店住所:東京都中央区新富1-11-1 シャルマン八丁堀 2F

関連記事

  1. 東京 六本木『まるや』

  2. 東京 有楽町『炭焼 うな富士』

  3. 東京 赤坂『にょろ助』

  4. 東京 田町『うなぎ四代目菊川』

  5. 東京 新橋『名代 宇奈とと』

    東京 新橋『名代 宇奈とと』

  6. 東京 渋谷『はなぶさ』