<うなぎ以外の様々な要素にこだわり>
『まるや本店』は名古屋で創業したのは2001年。ひつまぶしの激戦区である名古屋の地で現在では愛知県内に6店舗を展開している。その『まるや本店』が初めて東日本に出店したのが2019年3月の東京ミッドタウン店である。
蒲焼きは名古屋スタイルの蒸さずに直火で焼く地焼きで、店のメニューやホームページにも記載がある「七つのこだわり」として、うなぎや水等が挙げられているが、うな丼を食べて最初に体感するのはタレの違いである。使われているのは伝統製法の杉桶で仕込んだたまり醤油と、愛知県碧南地域の本みりんを使い、少量のタレでも醤油とみりんの深く、そして円やかな味わいが、口の中で長くジックリと感じられる。
こだわりの一つに挙げられている奈良漬物も、口直しと言うよりも、この漬物だけで白いご飯がおかわりできるアッサリとしていながら、酒粕の深く熟成したうま味がして、サクサクと綺麗で新鮮な音を立てて食べられ、漬物をおかわりしたいくらいの品。
<ここでしか出会えない取り合わせ>
ひつまぶしに使われている木製の器は、安土桃山時代から石川県加賀市で伝わる伝統の山中漆器で作られた特注品。何度も塗りを繰り返している手作りの器なので、一つ一つ微妙に濃淡は違うが、吸い込まれるような深い色合いと滑らかな肌触りで、直接口を付けても全く違和感のない器である。
うなぎだけでなく米も地焼きの蒲焼きやひつまぶしに合うように毎年精米を行っているそうだが、東京店では現在魚沼産のコシヒカリを100%使っており、タレにしっかりと絡むように少しかために炊いている。ご飯の粘りが口の中で噛む毎に、サクサクに焼き上がった蒲焼きと見事に融合していくのである。
ひつまぶしの二膳目である薬味を入れてもご飯と蒲焼きとタレが互いを高め合い、新たな味わいを生み出している。こだわりの七品には入っていないが、袋に入った海苔も良質の有明産で、袋を空けただけで磯の香りが漂い、三膳目のお茶漬けではふりかけて一緒に味わって欲しい。

ディナータイムには、ひつまぶしをメインデッシュにした会席コースが楽しめる
<最後に提供される緑茶も吟味を重ねた逸品>
持ち帰りや宅配で提供するお弁当も、店内メニューでは出していないうなぎの握り寿司やミニサイズのひつまぶし弁当を用意しており、六本木界隈の顧客のニーズを見越した対応を行っている。
店内で食事をする際に食事終わりで提供される緑茶も忘れずに口にしてもらいたい一品。蒲焼きを食べると、口の中にタレの甘塩っぱい味が残るが、この緑茶おちょこ程度の小さいカップであるが、一杯飲むとほのかな甘さを感じながら、深みのあるコクと少しの渋みが後から現れ、蒲焼きの後味を綺麗に流してくれるのである。どこ産の緑茶か気になったので聞いてみると、既製品のお茶を提供しているわけではなく、蒲焼きを食べた後に飲むのに最適な緑茶を、茶葉の専門家に独自にブレンドして貰い、毎年社員で試飲会を行い茶葉を選定している『まるや本店』特製の緑茶だという。
東京ミッドタウン店では、東京の人々に合わせた味になるようにしており、愛知県の店舗とは微妙に味付けを変えているという。美味しさへの追求の証しである七つのこだわりは、細部に至るまでレベルの高さに驚かされるが、ミニ弁当や地域毎の味付け対応等の、顧客の満足度を求めるサービスへの姿勢は、うなぎ店の新しい様式を切り開いていくのではないだろうか。
[2020年7月訪問、文/中西 純一、写真/佐藤 兼永]

店舗情報
- 基本情報
- 営業時間
- 地図
- その他
住所:東京都港区赤坂9−7−4 東京ミッドタウンガーデンテラスア3F
電話:(03)5843-1708
席数:48席(テーブル席、半個室4室、個室1室あり)
メニュー:英語メニューあり
月曜〜土曜/11:00〜23:00(ラストオーダー 22:00)
日曜と祝日/11:00〜23:00(ラストオーダー 21:00)
<定休日>
なし ※シーズン・天候等により変更する場合があります。
開店:2019年3月22日
運営母体: 有限会社 まるや本店
自社HP: https://www.maruya-honten.com
Instagram:https://www.instagram.com/maruya_tokyomidtown/
デリバリー:Uber Eats、等
テイクアウト:うな丼弁当、ひつまぶし弁当などはテイクアウト可能