<名古屋の美味しさを東京でオシャレに>
うなぎ店と言えば、日本人なら誰しもイメージするのは木造家屋に、しっかりとした木製の机と椅子が並べられた和風の内装だろう。しかし、それは伝統的な佇まいであり、若い人達や外国人観光客には新たな装いで提供することがうなぎの消費拡大にも結びつくのではないだろうか。
新しい時代のうなぎ店を目指しているという点で『はなぶさ』渋谷店は、明快なメッセージを発信しているレストランである。一歩店内に入ると、白を基調とした内装に、壁一面に観葉植物が飾られ、カラフルなガラス器が並べられたカウンターバーがあり、コロニアル調のカフェの様な空間に仕立てられている。もし事前にこの店がうなぎ店だと聞いていなかったら、フランス料理やイタリア料理が出てきても何ら驚かない、デザインである。
『はなぶさ』のオーナー大川三千代さんは愛知県出身で、東京ではまだ少なかった名古屋式の地焼きのうなぎを東京でも食べて貰いたいと考え、2012年に麻布十番に店を開き、2016年5月に渋谷店をオープンさせた。麻布十番店も渋谷店もスタイリッシュな内装に決めたのは大川さんで、サクラの花びらを模したピンクのロゴマークを基軸にして、箸袋や箸置きもピンクのロゴを配し、器や小物も女性らしい愛らしさに満ちあふれている。
<愛知産へのこだわり>
この店の内装の斬新さに目を奪われてしまいがちであるが、この店の本当のこだわりはうなぎである。愛知県一色産のうなぎのみを使用しており、ブランドでもある一色産うなぎは鰻専用水道によって取水された矢作川の清流水を使って、養殖密度を抑え、より天然に近い環境で生育させることで、良質な脂がのり、皮もやわらかく、うなぎ特有の生臭さがほとんどないと言われている。
一色産うなぎの中でも脂ののったサイズを取り寄せ、蒸さずに直接焼き上げる名古屋式の焼き方で、表面をカリッと焼き上げ、中身はジューシーに仕上げている。
使用しているタレも愛知県三河産のたまり醤油とみりんを取り寄せ、見た目はちょっと濃いめの色合いのタレであるが、ご飯と絡まった時の甘さとうま味は上品で、穏やかに口の中に香り立ってくる。蒸さない地焼きに合わせた醤油とみりんの絶妙な配合がなせる技であろう。

一杯目の鰻丼として食すと蒲焼きの香りが立ち、ダシをかけると新しいうま味を感じる
<インバウンド対応、おもてなし術>
この店が新しい時代のうなぎ店であると言えるもう一つの要素は、インバウンド対応であろう。これまでのうなぎ店ではお酒類はビールと日本酒・焼酎くらいしか置いていなかったが、『はなぶさ』では日本酒・焼酎の他にシャンパンやワインにカクテルまで多くのお酒類を用意しており、客の好みに合わせた価格帯で取りそろえている。
また、うな丼とひつまぶしというワンプレートメニューの他に、白焼きや肝焼きを含めてデザートまで提供するコース料理も充実しており、日本人だとうなぎは丼か重箱のみという固定概念を持っているが、高級レストランだとコース料理を注文するスタイルが当たり前の欧米人や中華系の人々向けの“おもてなし”が考えられている。おもてなし術のひとつに、料理とドリンクのそれぞれのメニューには英語や中国語が用意されており、スタッフも英語接客が出来る人材を揃えている。
1階はカウンター席にソファー席、2階には2名でも利用できる個室に、3階の屋上には青空が望めるテラス席もあり、無料のWi-Fiも利用できるのは、外国人観光客でなくても、今の若い世代の人々には渋谷に来た際に気軽に立ち寄れる、ある意味カフェのスターバックスのような、うなぎ版サードプレイスではないだろうか。

3階は予約の宴会で使用出来るテラス席となっており、渋谷の星空を見ながら食事が楽しめる
[2020年7月訪問、文/中西 純一、写真/佐藤 兼永]

店舗情報
- 基本情報
- 営業時間
- 地図
- その他
住所:東京都渋谷区渋谷1-15-20 はなぶさビル
電話:(03)6419-7016
席数:60席(カウンター席、テーブル席、テラス席、個室あり)
メニュー:英語、中国語メニューあり
<ランチタイム>
火曜〜日曜/11:30〜15:00(ラストオーダー 14:30)
<ディナータイム>
火曜〜日曜/17:30〜22:00(ラストオーダー 21:30)
<定休日>
月曜日 ※シーズン・天候等により変更する場合があります。
開店:2016年5月1日
運営母体: 大川株式会社
自社HP:https://hanabusa-tokyo.com
Instagram:https://www.instagram.com/hanabusa_tokyo/
デリバリー:Uber Eats、ファインダイン等
テイクアウト:鰻弁当、鰻重などはテイクアウト可能