身近な場所で食べられるようになった大手外食チェーンの「うな丼」
鰻と丼の情報発信サイト『うなぎ_STYLE』では、2022年7月23日[土]の土用の丑の日を前に、第3回となる大手外食チェーン5社の「うな丼(うな重)」を、うなぎビジネスのプロを評価員にして、ブラインドテスト(評価者には社名は分からないようにする)を実施しました。毎年、大手牛丼チェーンやファミリーレストランに弁当チェーンでは、夏場のスタミナ食として「うな丼」や「うな重」が季節の風物詩として提供されてきました。近年では大手外食チェーンでは「うな丼」が一年を通して提供する定番メニューに入るようになり、より一層身近に食べられる丼メニューになりました。
値段も900円から1100円と、鰻専門店と比べるとリーズナブルな価格帯で提供されていることから、『うなぎ_STYLE』編集部として、一般消費者の皆様に「うな丼(うな重)」を身近な場所にある大手飲食チェーンで、気軽に「うな丼」を楽しんで食べて頂きたい、又土用の丑の日以外の季節にも食べてもらいたいと考え、外食チェーンの「うな丼」を、うなぎのプロによる味と外観の比較チェックを行い、個々の評価員の採点を集計し、採点について協議も行いこの時期にランキング化しています。
第3回となる今回、評価の対象としたのは、日本最大手の外食チェーンとして、牛丼チェーンである『すき家』と『吉野家』、回転寿司チェーンでは『無添くら寿司』、ファミリーレストランからは『ガスト』、持ち帰り弁当チェーンでは『キッチンオリジン』の5ブランドで、それぞれ同じ日の午後に、店頭から持ち帰り(テイクアウト)を行い、『うなぎ_STYLE』編集部で評価会を実施しました。

[写真1:外食チェーン5社の持ち帰り「うな丼」容器と鰻蒲焼きの外観比較]
評価方法(ブラインドテスト)について
今回も試食では5社の「うな丼」を、A〜Eのアルファベットを記入した別容器に分け、社名を明かさずに(ブラインドテスト)、うなぎ蒲焼きの流通・販売に長年関わるプロと、鰻料理専門店の料理長を合わせた3名が評価員となり、どのチェーン店の「うな丼」を食べているかは分からないようにして、味についてそれぞれの評価員が実食し採点しました。外観チェックでも持ち帰り容器から店が予測される可能性があるため、それぞれの持ち帰り容器からご飯と鰻蒲焼きを取り出し、編集部で用意したA〜Eの付箋を付けた容器に移し替えた後に外観審査を行いました。(写真1)
評価会の進行は日本評価学会正会員で食生活ジャーナリストの会会員でもあり、これまで「外食チェーンのロハス度チェック」や「介護食弁当チェック」を行ってきた経験のある『うなぎ_STYLE』編集長の中西純一が監査役を兼ね、厳正で客観的な食べ比べが行われるように小分けや重量計算を担当しました。
実食チェックと外観チェックの終了後、監査役の中西を司会に、評価員3名の座談会を行い、それぞれの評価を語ってもらいました。点数が集計されていない時点で意見を出して貰った所、評価員は昨年の第2回と同じメンバーでしたが、昨年よりも評価が難しくなったというのが全員共通の見解でした。昨年までと違って、明らかに味の劣る鰻蒲焼が無かったという点、また鰻蒲焼の厚みや大きさが増しているうな丼があり、外食チェーンでこれだけ大きな蒲焼が食べられる様になった点が驚きを含めて話題にのぼりました。採点の結果が集計され、評価員に順位と点数を告げ、最終順位に異存が無いかを確認を行い、採点通りの結果で全員の了承を得られましたので、採点結果通りで順位を確定することにしました。(写真2)

[写真2:外観チェックと実食チェックを行った評価員3名と監査進行役1名]
2022年のおすすめ第一位は『ガスト』!
今年の総合評価第1位に選ばれたのはファミリーレストランチェーン『ガスト』の「うなぎ弁当」でした。第2位となったのは牛丼チェーンの『すき家』の「うな丼」、第3位は牛丼チェーンの『吉野家』、僅かの差で持ち帰り弁当チェーンの『キッチンオリジン』の順となりました。
評価員からは、今年はどの外食チェーンも肉厚で大きなサイズの鰻蒲焼きを使っており、大きくなったことで昨年までのような会社による違いが無くなった中で、鰻蒲焼きの美味しさという点で『ガスト』が頭一つ抜けたことで、1位に選ばれる結果となりました。一昨年も一位に選ばれている『ガスト』は、ファミリーレストランとして「うな丼」のメニュー化に関して他の飲食チェーンよりも早くから取り組んできたことが、今年も他の飲食チェーンとの経験や実績が勝っていたのではないかというのが評価員の寸評で出ました。
第2位から第5位までは鰻蒲焼きの評価では、ほぼ同じ点数となっており、外観審査やご飯とタレで僅かな差が順位を分けた形となりました。昨年第1位となった『すき家』は、今年も鰻蒲焼きの味も良く、サイズも大ぶりで、審査員からも外観評価では1位となるくらい見た目の美味しさ感は高い商品となっていました。第2位の『吉野家』は、昨年この評価会でも外観審査で、鰻蒲焼きを細かく切って、切り身を3つ合わせて提供していた事で評価を落としていましたが、今年はその問題点を改善し、更に昨年よりも大きさも厚みも増した鰻蒲焼きを提供しており、昨年のようなアンバランスさは無くなり、バランスの良い美味しさが見た目にも分かる「うな丼」になっていました。第4位の『キッチンオリジン』も鰻蒲焼きの大きさがしっかりあり、上位の「うな丼」とはほんの僅かな点数でしかなかったです。
今年は大手外食チェーン各社の「うな丼」を評価会に選ぶ調査時、監査進行役が試食した時点で、各社とも昨年よりも進化しており、混戦が予想されたため、評価会を始める段には、監査進行役から「今年は味に大きな差が無いと思われるので、慎重に食べ比べて頂き、各社の点数には差を付けて欲しい」と要請したことで、昨年よりも相対点数が低くなったと考えられます。相対点数は昨年よりも下がっていますが、各社の味やボリュームは昨年よりもアップしたというのが全ての評価員も異口同音に語っており、各社の「うな丼」がレベルアップしたことで配点が厳しくなった結果と推測しています。
第5位となった『くら寿司』も鰻蒲焼きの評価では他社とほぼ同じ点数を得ており、今年は他社が円安や燃料代の高騰に世界的な食料不足問題というトリプルパンチを受けて、軒並み昨年よりも100円程の値上げをするなか、『くら寿司』は1社だけ昨年と同じ価格で「うな丼」を提供しています。他社の大きさやボリューム感に比べてしまうと、どうしても外観評価は下がってしまったことで、順位を落としてしまいましたが、他社よりも300円安く提供している点を考慮すれば、『くら寿司』の企業努力は評価されるべきであると考えます。
鰻蒲焼きお得度の比較では『吉野家』がダントツの第一位!
「うな丼(うな重)」をリーズナブルに、季節に関わらず食べて頂きたいという「外食チェーンのうな丼チェック」の趣旨を念頭に置くと、どの外食チェーンのメニューが最もお得感が高いかを知りたいところです。各社の鰻蒲焼きの重量を個別に量り、価格で割り、鰻お得度ランキングも作りました。鰻蒲焼き比率が最も高かったのは、ダントツで『吉野家』でした。『吉野家』の「鰻重」は、一枚盛り(通常だと普通盛り)で、鰻蒲焼きの重量が112gもあり、これまでにも例を見ない大きな鰻蒲焼きとなっていました。第二位は『キッチンオリジン』で、こちらも95gとかなり大きな鰻蒲焼きでした。他社も昨年よりも鰻蒲焼きのサイズが大きくなっていましたが、この2社は鰻蒲焼きの幅もあり、厚みも増した商品開発を行ったのは間違いなさそうです。
外食チェーン「うな丼チェック2022」_最終集計結果『うなぎ_STYLE』は、消費者目線で生産者・販売者を繋ぐ役割
大手外食チェーンで「うな丼」をメニュー化するには1年以上の時間がかかると言われています。昨年の春は天然で採取する鰻の稚魚が予想よりも豊漁であったことから、今年の土用の丑の日向けにジックリと鰻を大きくしてから買い付けることを大手外食チェーンと輸入販売会社とで準備を整えていたのだと、評価員からの予想も出ました。今年の春の鰻の稚魚は昨年よりも採取量が少なかったことから、ある意味今年の外食チェーンの「うな丼」は、消費者にはかなりお得な価格で食べられる年になる絶好の機会と断言できます。
また、第1回から続けています鰻のプロが真摯に採点し、社名を知らずに各社を比較し、意見を述べることで、外食チェーン側でも気がつかなかった課題を明らかにすることが出来、引いては外食チェーンの「うな丼」のレベルアップにも貢献出来るのではないか。更にその事によって一般消費者に「うな丼」の美味しさを身近な飲食店で感じて貰えるのではないかと『うなぎ_STYLE』編集部では信じています。
鰻と丼の情報発信サイト『うなぎ_STYLE』では、今後も様々な丼物を専門家によるブラインドテストを行うと同時に、食の安全や安心を一般消費者向けに啓蒙する活動や、うなぎの食べ比べ会などの食事会やイベント開催を予定しており、食を取り巻く生産・流通・販売に関係する人々と消費者を正しく繋ぐ役割をになっていきたいと考えております。
<評価会実施日>
2022年6月28日[火]
<調査対象とした外食チェーン5社と購入店舗>
[牛丼チェーン]
すき家(神保町駅前店)
吉野家(神保町店)
[回転寿司チェーン]
無添くら寿司(高田馬場駅前店)
[ファミリーレストランチェーン]
ガスト(高田馬場駅前)
[持ち帰り弁当チェーン]
キッチンオリジン(荻窪南店)
<評価会の概要>
■評価会の進行
[1]対象商品は同じ店で、同じ日時に購入した品を小分けして食べる
[2]試食している時は、評価員同士の会話や感嘆の声は禁止
[3]評価員はどこの会社(店)の丼を食べているかは分からないようにする
[4]試食する鰻蒲焼きの部位は各社とも条件を同じくするため、頭から胴の部位に揃える
■評価員のプロフィール紹介
Mr.T:鰻の蒲焼き輸入に携わり32年
Mr.N:鰻の蒲焼き輸入に携わり27年
Mr.W:東京・文京区内の鰻店三代目店主、料理の世界に入って16年
■評価分類と評価項目
【指標1:外観評価】
見た目の美味しさ、焼き具合、切り身の取り方
【指標2:蒲焼き評価】
鰻の食感、香り、味付け(甘辛さ)、美味しさ感・満足感
【指標3:ご飯とタレ】
ご飯の美味しさ、タレの味付け・蒲焼とタレとの相性、薬味(山椒)の美味しさ
■評価員による総合評価討論会
※補足事項
大手外食チェーンはブランド名や業態の違う飲食チェーンを展開しており、例えば『ガスト』を運営しているすかいらーくグループでは、傘下のファミリーレストラン『ジョナサン』でも「うな丼」が提供され、『すき家』を運営するゼンショーホールディングスには和風ファストフードチェーンの『なか卯』や和食専門レストランチェーン『華屋与平兵衛』に、回転寿司チェーン『はま寿司』でも「うな丼」をメニュー化しています。ブロンド名は異なっても同じ経営母体で、原産地が同じ鰻であれば、同じ「うな丼」と『うなぎ_STYLE』編集部では考察しており、評価の対象には入れていません。ある意味、『ガスト』の「うな丼」の評価は、『ジョナサン』の「うな丼」の評価でもあると考えて頂いて、大きな間違いは無いと想定しています。