通年で食べられるようになった外食チェーンの「うな丼」
日本初の鰻と丼の情報発信サイトである『うなぎ_STYLE』では、7月28日[水]の土用の丑の日を前に、昨年に引き続き大手外食チェーン5社の「うな丼(うな重)」をうなぎビジネスのプロを評価員にして、ブラインドテスト(評価者には社名は分からないようにする)を実施しました。
これまで毎年多くの外食チェーンでも夏の風物詩、夏場のスタミナ食としてうな丼やうな重は提供されてきました。昨年から今年にかけては大手牛丼チェーンではうな丼が定番メニューに入るようになり、より一層気軽に食べられる丼になりました。値段も800円から1000円と、鰻専門店と比べるとリーズナブルな価格帯で食べられることから、『うなぎ_STYLE』編集部として、一般消費者の皆様に更に「うな丼(うな重)」を土用の丑の日以外でも気軽に楽しんで食べて頂きたいと考え、外食チェーンの「うな丼」を、うなぎのプロによる味と外観の比較チェックを行い、個々の評価員の採点を集計し、ランキング化しました。
評価の対象としたのは、日本最大手の外食チェーンとして、牛丼チェーンである『すき家』と『吉野家』、回転寿司チェーンでは『無添くら寿司』、ファミリーレストランからは『ガスト』、定食チェーンでは『やよい軒』の5ブランドで、それぞれ同じ日の午後に、店頭から持ち帰り(テイクアウト)を行い、『うなぎ_STYLE』編集部で評価会を実施しました。

外食チェーン5社の持ち帰りうな丼容器と鰻蒲焼き
評価方法(ブラインドテスト)について
うなぎ蒲焼きの流通・販売に長年関わるプロと、鰻料理専門店の料理長を合わせた3名が評価員となり、どのチェーン店のうな丼を食べているかは分からないようにA〜Eのアルファベットを記入した別容器に分け、社名を明かさずに(ブラインドテスト)、味についてそれぞれの評価員が実食し採点しました。
外観チェックでも持ち帰り容器から店が予測される可能性があるため、それぞれの持ち帰り容器からご飯と鰻を取り出し、編集部で用意したA〜Eの付箋を付けた容器に移し替えた後に外観審査を行いました。
評価会の進行は日本評価学会正会員で食生活ジャーナリストの会会員でもあり、これまで「外食チェーンのロハス度チェック」や「介護食弁当チェック」を行ってきた経験のある『うなぎ_STYLE』編集長の中西純一が監査役を兼ね、厳正で客観的な食べ比べが行われるように小分けや重量計算を担当しました。
実食チェックと外観チェックの終了後、監査役の中西を司会に、評価員3名の座談会を行い、それぞれの評価を語ってもらいました。採点の集計の結果、点数上では1位から3位が拮抗していたため(評価員2名が点数では『すき家』を第1位にしていました)、社名を明かさずに上位3社からどのうな丼を1位とすべきかを評価員で議論しました。基本的な鰻蒲焼きの味やタレの良さ、ご飯の美味しさに外観を含めた「うな丼」としての完成度が重要という事で意見が一致し、点数通りの結果で評価員全員が了承しました。全員の総点数と順位を評価員に伝え、2位以下の順位について了解を得た後に、評価員3名には社名を明かしました。

外観チェックと実食チェックを行った評価員3名と監査進行役1名
2021年のおすすめ第一位は『すき家』!
今年の総合評価第1位に選ばれたのは牛丼チェーン『すき家』の「うな丼」でした。わずかな点数で第2位となったのは牛丼チェーンの『吉野家』の「鰻重」、ファミリーレストランチェーンの『ガスト』の「うなぎ弁当」が第3位でした。評価員からは、この3社は外食チェーンでは早い時期からうな丼をメニュー化した長年の実績が、蒲焼やタレの評価が高くなった理由だろうという意見がありました。
特筆しておきたいのは、第2位となった『野家』は、蒲焼きの味では一番高い点数でした。しかし、蒲焼を細かく切っているという点で外観評価が低くなってしまいました。一般消費者が考える「うな丼」或いは鰻蒲焼きという“見た目”は、料理として考えるとやはり重要な要素でしょう、という評価員からコメントがあり、大変惜しい結果となりました。
昨年のうな丼チェックでは第1位であった『ガスト』が今年は第3位となりました。これについて、昨年も評価会に参加している評価員からは『すき家』と『吉野家』が昨年よりもレベルを上げてきたことで『ガスト』の相対評価が下がっただけだろうとの推測がありました。
評価点数が下位となった「うな丼」については、うなぎの蒲焼きとタレの味で決まる部分が大きく、ご飯との相性などの要素もあり、これらの組み合わせやバランスが上位3社と比べてしまうと「うな丼」らしい満足度が足りなかったのかも知れません。日本ではジャポニカ種の鰻を長年食べてきた歴史があるので、他の種では違和感を感じてしまう、という声もありました。
コストパフォーマンスの高さでは『くら寿司』が第一位!
うなぎをリーズナブルに、沢山食べたいという声もあると考え、うなぎの蒲焼きの重量を価格で割り、うなぎのお得度ランキングも別に作りました。うなぎ比率が最も高かったのは『くら寿司』の「うな丼」で、第二位は『すき家』の「うな丼」でしたが、今回の評価会以外でも5社のうな丼を食べていますが、例年に比べて各社とも鰻蒲焼きの横幅が増し、厚みも増した印象があります。
外食うな丼チェック2021_評価採点表(完成版)『うなぎ_STYLE』は、消費者目線で生産者・販売者を繋ぐ役割
大手外食チェーンの料理は、開発からメニュー化までには1年以上の時間がかかると言われており、うな丼も鰻蒲焼きやタレの味を変えるには数年単位の期間が必要だと思います。昨年の第一回外食チェーンのうな丼チェックを行ってから、今年の第二回では鰻蒲焼とタレでは昨年よりも進化しているチェーン店もあり、外部のプロが真摯に客観的手法で評価することで、一般消費者にも伝わって行くと『うなぎ_STYLE』では信じて止みません。
鰻と丼の情報発信サイト『うなぎ_STYLE』では、今後も様々な丼物を専門家によるブラインドテストを行うと同時に、食の安全や安心を一般消費者向けに啓蒙する活動や、うなぎの食べ比べ会などの食事会やイベント開催を予定しており、食を取り巻く生産・流通・販売に関係する人々と消費者を正しく繋ぐ役割をになっていきたいと考えております。
<評価会実施日>
2021年6月22日[火]
<調査対象とした外食チェーン5社と購入店舗>
[牛丼チェーン]
すき家(神保町駅前店)
吉野家(神保町店)
[回転寿司]
無添くら寿司(高田馬場駅前店)
[ファミリーレストラン]
ガスト(高田馬場駅前)
[定食チェーン]
やよい軒(水道橋白山通り店)
<評価会の概要>
■評価会の進行
[1]対象商品は同じ店で、ほぼ同じ日時に購入した品を小分けして食べる
[2]試食している時は、評価員同士の会話や感嘆の声は禁止
[3]評価員はどこの会社(店)の丼を食べているかは分からないようにする
[4]試食する鰻の部位は各社とも条件を同じくするため、頭から胴の部位に揃える
■評価員のプロフィール紹介
Mr.T:鰻の蒲焼き輸入に携わり31年
Mr.N:鰻の蒲焼き輸入に携わり26年
Mr.W:東京・文京区内の鰻店三代目店主、料理の世界に入って15年
■評価分類と評価項目
【指標1:外観評価】
見た目の美味しさ、焼き具合、切り身の取り方
【指標2:蒲焼き評価】
鰻の食感、香り、味付け(甘辛さ)、美味しさ感・満足感
【指標3:ご飯とタレ】
ご飯の美味しさ、タレの味付け・蒲焼とタレとの相性、薬味(山椒)の美味しさ
■評価員による総合評価討論会