2020年『日本流行丼大賞』候補丼、5品リスト
年末まであと1ヶ月となり、今年話題になったり、注目を集めた丼(ドンブリ)を『日本流行丼(りゅうこうどん)大賞』の候補丼として5品、『うなぎ_STYLE』編集部がリストアップしました。候補に挙げた丼の候補となった理由を述べると共に、2020年(令和二年)という年の食の流行を振り返ってみたい。
将来、2020年という年を客観的に見ると、新型コロナウイルスが世界中で蔓延したことが最大のトピックスになるのは間違いない。日本でも春先に新型コロナウイルスの感染者の急増で、東京を中心とした7都府県では政府の緊急事態宣言が発令され、学校や会社への通勤通学をしなくなり、毎日自宅で過ごす「巣ごもり」状態になった。
飲食業界でも緊急事態宣言によって受けたダメージは計り知れないほど大きく、7都府県以外でも全国的に外出自粛と営業自粛が求められ、大手外食チェーンから個人営業の飲食店でも多くが営業を中止した。最低限の日常生活が送れるように、飲食店でも配達専門店は営業を続け、一部の飲食店では店内飲食は行わず、持ち帰りだけの販売に切り替える店もあった。
2020年の社会情勢を踏まえると、新型コロナによってもたらされた「巣ごもり需要」が食の流行にも影響を与え、丼業界でも大きなキーワードになったような気がする。これらの状況を鑑みながら、今年話題になったり、注目を集めた丼をピックアップしたい。
<うな牛>
○提供飲食店:すき家、松屋
新型コロナで免疫力が話題になった今年、「巣ごもり」で複数の食材を使った丼が人気となった。その中でも免疫力を上げるための食材として鰻と定番の牛肉が一緒に盛り付けられていることで土用の丑の日前後には話題になった。
以前から「うな牛丼」を販売していた大手牛丼チェーンのすき家が TVCM で、人気女優の石原さとみさんを起用し、石原さんが「うな牛丼」を食べて いる映像が流れたことで更に話題となった。また、これまで牛丼とうな丼を別々に出し ていた大手牛丼チェーンの松屋でも今年から「うな牛丼」を土用の丑の日前に発売をしたのも注目を集めた。
<スタミナ超特盛丼>
○提供飲食店:吉野家
4月に吉野家が発売開始した、3種の肉の量が並盛りの3倍超の具と、大盛りと同じご飯量が入った丼。具材には鶏肉、牛肉、豚肉と3種類の肉が入っており、798円(税別)という価格ながらも、発売から40日間で100万食を販売した。
新型コロナの影響で食事回数や場所が限られ、一回の食事で夕食も済ませる日常生活に強いられ、大盛りや超特盛の需要が増えたという背景。更に、従来の牛丼の超特盛丼とは違って、今年の傾向である複数の食材を使った丼で、牛肉・豚肉・鶏肉に卵が入った上にスライスニンニクが振り掛かっているという点が、若者層やがっつり食べる男性に人気を博した。

[画像提供:株式会社吉野家]
<魯肉飯(ルーロウハン:台湾風豚角煮丼)>
○販売店・提供飲食店:複数あり
・タピオカ店、台湾カフェ、台湾料理店、中国料理店
・松屋、すき家
・セブンイレブン
昨年急増したタピオカドリンク店で今年も営業を続けている店舗や、タピオカブームの流れを受けて今年開店した台湾系茶館やカフェでは、タピオカドリンク以外にも食事メニューを提供するようになり、多くの店で魯肉飯が食べられる様になった。ちょっと小さめの丼で、豚肉と味付け玉子に野菜(或いは漬物)と3種類以上の食材が入っているヘルシーさが特に女性に人気となった。
また、飲食店だけでなくコンビニのセブンイレブンで今年はじめて「台湾風豚角煮丼(ルーロー飯)」が登場し、おにぎりでも登場した。牛丼チェーン大手の松屋とすき家でも「豚角煮丼」がメニュー化され、全国的に食べられる丼となった。
今年はコロナ堝の状況で海外に気軽には行けない状況が続き、海外で食べた味を身近な場所で食べたいという欲求も高まった。元々日本人の渡航先ナンバーワンであった台湾の食事への想いは募っていたと考えられ、その代表的な例として、人気タレントの指原莉乃さんががInstagramで、新型コロナで外出が控えられていた時期に「ルーロウハン食べたい」という投稿があった。
<三河鮮魚の海鮮丼>
○提供飲食店:ホテルアークリッシュ豊橋
今年7月、将棋の藤井聡太棋聖(現在は二冠)が王位戦第一局で食べた丼。王位タイトル獲得後の8月20日の対局後記者会見で「対局の時に海鮮丼は好手(こうしゅ)」と語り、更に話題となった。
丼の食材は三河湾でとれた新鮮なエビ、イカ、マダイ、愛知県のブランド魚の絹姫サーモンなどが盛られている。この時期、藤井棋聖のタイトル戦では日本将棋連盟がランチを撮影し各メディアに提供し、将棋の棋士達が丼を食べていることが新聞やTVで報道された。

[画像提供:日本将棋連盟]
<名古屋系うな丼>
○提供飲食店:東京に出店している名古屋系うな丼(ひつまぶし)飲食店
・『炭焼うな富士』有楽町店、『うなぎ四代目菊川』ムスブ田町店、『まるや本店』東京ミッドタウン店、『はなぶさ』渋谷店、『ひつまぶし名古屋備長』丸ビル店など
今年9月に名古屋に本店があり、2時間以上の行列が出来るので有名な『炭焼うな富士』が東京有楽町に初の支店を出店。9月にはやはり名古屋の『うなぎ四代目菊川』も東京に出店し、それぞれテレビや雑誌等で多く取り上げられ、東京でも名古屋のうな丼やひつまぶしに注目が集まった。
近年名古屋にルーツを持つうなぎ店が東京に相次いで出店をしており、どの店も関西風のうなぎを蒸さずに生のまま高温で直接焼く“地焼き”タイプで、表面をカリッと焼き上げ、タレには愛知の三河産たまり醤油に本みりんを使っていることから“名古屋系うな丼”と呼ばれた。従来のうなぎを蒸してから焼く東京風とは違った美味しさや味わい方があるとして、中部地区から関西では知られていた名古屋系うな丼が東京で大きく注目を集めるようになった。